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アメリカ演技コーチの違和感

イヴァナ・チャバックの本を読み始めました。
かつてポールのワークショップにも参加した白石哲也さんの翻訳書。
彼は、チャバックの講師ライセンスも取り、ますます彼女との親睦を深めている。
また、うちで2年学び、舞台にも出たNOYさんはどうやらチャバックの講習をアメリカに受けに行くようだ。

読み始めたばかりであれだけど、チャバックのメソッドは、
トラウマ体験も含めネガティブな感情を利用し、力強い勝てる演技に導くというもの。
スタニスラフスキーには「感情の記憶」というものがあり、チャバックのいうインナー・モノローグも、
元はスタニスラフスキーからきているのだけど、スタニスラフスキーはそんな風に
感情体験を激烈に用いることは薦めなかった。

4年連続ワークショップを行ったポール・パーカーも、
いい演技に対して「STRONG」という言葉を使う。
感情やエネルギーが強く演技になって現れているときに
そんな言葉を使っているので、やはりポールもそうした感情の強さ
優れた演技のトッププライオリティーに置いている。

それにぼくは違和感を感じる。

スタニスラフスキーやマイケル・チェーホフ、デヴィッド・ジンダー、
ピーター・オイストン、デクラン・ドネラン、などアメリカ以外の演技講師はそうではないからだ。

多分にアメリカの気質と、映画産業の大きさが物語っていると思われる。
日本人が同様のことをやって良い結果が出るかは別だが、
感情表現が苦手な日本人には抵抗感あるものの、演技力向上にはかなり役立つだろう。

しかし、ぼくがもっと追求しているのは、繊細なるリアリティーと創造性だ。
そこがアメリカ系は欠けているような気がする。

だから、もし自分が、日本に本当に紹介したいと思える演技講師を連れてくるとするならば、
イギリスか、ヨーロッパ系の人だろうなと思う。その方が、自分の考えと合っている。

けれど、ぼく自身が、ほぼ完成されたヨーロッパ系の演技講師なので、
ある意味アメリカ系の教えは新鮮であるし、部分的に参考になる。
特に、映像演技を教える上では、アメリカ系メソッドを入れてあげないと
なかなか勝てないだろうなぁとも思う。

そういえば、アメリカで教えていたtoriさんも、チャバックのライセンスを取ったそうだ。
ますます、自分はアメリカ系から離れたくなるな。

熾烈な競争が繰り広げられるオーディションで勝つことは、特にアメリカは大きい。
だから、結果を重視する。日本でも、同様だ。
だけど、そんなにも結果がほしいのだろうか?

成功は結果ではなく、プロセスなのに。

結果を出すことこそが成功であると信じて
そのために心を削り、勝つために感情を燃やして、
強く、強くなっていこうとするアメリカの俳優たちがちょっと気の毒にすら感じる。

大金を得て、有名人になっても、パパラッチに追いかけられてプライベートがない。
そこまでいかなくても、なにか有名な映画に出演して、お金と実績を得る。
しかし、それでどれだけ観客に無形の価値を与えられたかはわからない。
実際、なにも与えられていないかもしれない。
演技に対しても役者に満足感がどれだけあったのかわからない。
出演できたという実績の自己満足なのかもしれない。

俳優が芸術家であるならば、魂のこもった、最上級の演技で観客に無形の価値を与えてほしい。
金や名声は関係ない。真の成功は、芸術家として生きられたかどうかだ。

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