「桜の園の裏の園」の見どころ
その1:シアターΧの迫り舞台を利用した、客席二方向から観る舞台。
前身のSTONEψWINGS Theatre Companyの時代から、三方向からの客席や、
四方向からの客席、
半円状の客席など、舞台の空間創りに芸術的注意を払ってきた演出の別役ですが、今回は二方向からの舞台を選択しました。
従って、観る角度を変えると、また違った一面を発見できるでしょう。二度観て頂くのもお薦めです。
シアターΧの12mという長い間口を利用して、ファッションショーのランウェイのような細長い舞台になります。
その2:毎回違う演技、いつも新しく、いつもクリエイティブ。
伝統の「I DO I WANT」で稽古を行っています。
このスタニスラフスキー晩年のメソッドを、錬成させてきたSKY SOART ψ WINGS。
これほど自由でクリエイティブで自然な舞台は、日本では見られないことです。
今回も、毎公演違った演技になるので、是非お楽しみください。
その3:舞台美術担当は、造形芸術に関わるアーティスト、Morriと戸井田雄。
Morriは、前作「ANGEL」の舞台美術を担当し、照明家榊原大輔氏とのタッグで美しい舞台を創り上げてくれました。
今回はMorriに加え、愛知ビエンナーレなど多数の出展歴を誇る戸井田雄が共同制作。照明は、今回も榊原大輔氏。
榊原は、第2回公演より担当して頂いています。
さて、今回の舞台はどのように仕上がるのか?
その4:VANZ ENTERTAINMENTより若き女優の卵二人を起用
現在、別役が指導している、ホリプロ提携VANZ ENTERTAINMENTより、オーディションから選ばれた二名がドゥニャーシャ役として、
ダブルキャストで出演します。タレントを目指す二人は今回は初舞台。
しかし、初舞台でもこれだけの演技ができるということを世にお見せすることになるでしょう。
「I DO I WANT」メソッドが、二人の真価を引き出します。是非二人ともご覧ください。
その5:「桜の園」の本質を理解し、喜劇性を引き出した「裏の園」
「桜の園の裏の園」を観る前、そして観た後で、「桜の園」を読み返して頂くとよいでしょう。
読んでから観て頂くと、印象の違いを歴然と感じることでしょう。
そして「桜の園」のキャラクターたちは本当にこんな面白い人物だったのかと、
再度原作を読んで頂くと、「なるほどその通りだ」と感じることでしょう。
そして、「裏の園」がどれほど「桜の園」の本質に迫っているかを理解して頂けるはずです。
批評家や研究家、チェーホフ愛好家にも観て頂きたい作品です。
その6:天性のエピホードフ? 廣井憲
「天才(天然?)」の呼び声高い、根っからの喜劇俳優廣井憲は、エピホードフそのものです。
おそらくエピホードフの生まれ変わりである廣井憲に注目してみてください。
その7:ロパーヒン=チェーホフ?
別役慎司が担当するロパーヒンというキャラクターは、一番チェーホフに近いといえるかもしれません。
今回ロパーヒンを演じる上で、チェーホフに少なからず似せた所があります。
また、ロパーヒンという役は、チェーホフがスタニスラフスキーに演じさせたかった役でもあります。
スタニスラフスキーの日本での後継者ともいえる別役がロパーヒンを演じるのもまた運命的です。
その8:全く違うテンポ・リズム
原作との大きな違いは、コメディーの性質を引き出すため、同情を誘うような長い台詞やメランコリックな調子を廃していることです。
現代劇として退屈しないテンポ・リズムを有しながら、キャラクターたちの個性を際立たせています。
その9:エンディングをお楽しみに
「裏の園」は第五幕まであります。原作は四幕までです。
「裏の園」の一幕は、原作の一幕と二幕の間、「裏の園」の二幕は、原作の二幕と三幕の間となっています。
では、「裏の園」の五幕は? 原作の幕切れの少し後を描いています。
いったいどんな結末になっているのか、是非楽しみにしてください。
チェーホフも、死後100年以上経っているので、もしチェーホフの霊魂が「桜の園」を書き直したら、
もう少し違った作品になっているでしょう。「裏の園」の結末は、そんなアイディアで書かれています。