ピーター・ブルック(Peter Brook)

(1925〜)

 
 

 

#Empty Space(0空間・なにもない空間)

 なにもない0の空間は無限の可能性を創り出す芸術空間。
基礎となる考え「一人の男がなにもない空間を横切る。それを誰かが見ている。そこに演劇における行為の全てがある」→演劇の原点。行為者と観客の存在。
  Empty Spaceの考えは特に英国に浸透しており、演出家も舞台美術家もEmpty Spaceを基調とする舞台創造をレベルの高い素晴らしいものと見なしている。 

#四種類の演劇

The Deadly Theatre(腐敗演劇)


  特に商業的な演劇を痛烈に批判している。金儲け、客、名声などのために退屈なひどい作品を生み出す。みずからの公演活動にリスクを背負おうとしない。商業的な成功を追い求める動きは、ブロードウェーやウェストエンドにおいても危機となる。シェイクスピアにしても、伝統的なありきたりな方法で上演しようとする。だから「退屈」なものでしかない。
  ブルックは「退屈さ」を嫌い、警告を発している。逆に「生き生きさ」を大切にしている。
「私が自分の仕事で最も大切にしている指針がある。それは退屈さに対して常に最大の注意を払うことである。演劇において、退屈さというのは最もずる賢い悪魔のようなもので、どこにでも現れうる」(1993,p.34)
  The Deadly Theatreは偶像のようなもので、人々をありきたりのどこにでもある方法をよしと思わせてしまう力がある。この偶像を信じれば信じるほど、より腐敗した演劇へと沈んでいく。この腐敗の要素は至る所にあるので気をつけなければならない。
 
問題 「退屈さ」の魔の手から逃れるためにピーター・ブルックが重要視している稽古とはなにか?

 

Discuss 日本演劇はThe Deadly Theatreといえる要素がたくさんある。それを論じて みよう。(例;アイドルの出演) 
 

The Holy Theatre(神聖演劇)


  この演劇は、対照的にいい演劇について論じたもの。
「手短に言えば、神聖演劇とは、見えないものを見させる演劇のことである」→ブルックの考えを理解する上でとても重要なことば。
「存在するなにか他のもの、下か、周りか、上か、別のところか、見えないものでさえある。また私たちが読んだり記録したり出来る形式よりも更に先をいっている。それらは、とても力強いエネルギーの源を内包している」→演劇は、目に見えるものより見えないもののほうがエネルギーが溢れ、無限の可能性と表現性を持っている。また、それらをより多く生み出すのに適しているのがEmpty Spaceである。
儀式性」……この言葉もブルックを理解する上でキーワードとなる。演劇の原点は儀式であった。儀式性を取り戻すことで人間の失われた感覚を呼び覚ますことが出来る。彼は儀式性を演劇へと昇華させようとした。
  ブルックの尊敬する先駆者たち→シェイクスピア、チェーホフ、ブレヒト、アルトー、ジュネ、グロトフスキー。特にシェイクスピアに関しては、「シェイクスピアは常に誰もその上を行けないモデルである」「シェイクスピアは全てを持っている」と褒め称える。
  創造性・想像力・生・人間・演劇性・可能性・リスク……

The Rough Theatre(野性演劇)

「野性味」「荒々しさ」を持つ演劇……汚れ、野卑、風刺、グロテスク、闘争心
このような要素は人間社会に存在するもの。それらを避けるより、加えた方が魅力ある作品になる場合がある。より生き生きとリアルにさせる力を持つ。また、それらは「見えない」要素であり、褒め称えられるべきである。
人間の生活」「人間味」「真実味」、これらをブルックは追い求める。

The Immediate Theatre(直接性演劇)

演劇の種類というより、演劇の持つ直接的要素。神聖演劇と野性演劇の双方をあわせ持つ。簡単にいえば、「なぜ演劇であるかという問いに対する答え」「演劇に必要なもの」についての考察だといえる。
「劇場は疑いなく特別な場所である。それは拡大鏡のようなものでもあり、縮小鏡のようでもある」
演劇は常に現在の時間において存在を主張する

Discuss 演劇にしかない要素とは?

 

#Some Quotations from `There Are No Secrets’

「光を発するスパーク、小さな炎がある、それらは凝縮された蒸留された瞬間に激しさを与える」
スパークの瞬間と連続を重視せよ

「芸術家としての役者、本当の芸術家は創造性の瞬間に到達するため、常にいくらでも犠牲を払う準備をしている」→リスクを背負え

「Empty Spaceはストーリーを語らない。だから観客の想像力、注意、思考プロセスは自由で枷をはめられない」
「Empty Spaceにおいて想像力は隙間を埋める」
見えない力がある

「それはいいのか、悪いのか? 機能するのか? もしEmpty Spaceをスタート地点にするなら、唯一の問いかけは効率性である」
試す、確かめる、改善するの連続

「演劇には言葉を越えた無限なほどの言語がある。それらは観客とともに創り上げられ、維持されるコミュニケーションである。ボディーランゲージ、音言語、リズム言語、色言語、衣裳言語、美術言語、照明言語……」
表現の無限なる可能性


日本語の翻訳著書
「なにもない空間」
 「秘密は何もない」 「ピーター・ブルック回想録」
英語版 いくつかの著書をピックアップ
「The Empty Space」 「There Are No Secrets」
 「The Shifting Point: 1946-1987」 「The Open Door: Thoughts on Acting and Theatre」

ピーター・ブルック ハンドアウト
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