Heaven's White
<公演意図>
 第5回公演では、悲劇、もしくは人の陰の部分まで描いた深いドラマを上演したいと思った。ギリシア悲劇の上演も考慮に入れたが、ギリシア悲劇は、役者の力量が途方もなく求められる最難関作品。今現在ギリシア悲劇を上演するのは困難なので、人間の普遍性を描きながら、物語を抽出して、現代演劇としてギリシア悲劇的な作品を創作しようと考えた。
  女性を中心にした作品にしようという考えは、これまでの公演の流れから出たものだ。前回、前々回と男性が主役だった。女性のほうが感情を表に出すし、鋭利だ。それはギリシア悲劇をみてもいえること。感情の奥底で、激しく鋭く交錯し合う作品にしたいと思った。現代人の精神的な病や、過去・現在・未来という時間の観念、束縛や自由・生や死・幸福や不幸・愛や憎悪といった様々な対極要因が凝縮されながら、別役慎司28作目の最高傑作が仕上がった。
  演出的なイメージを先行して考えたので劇場選びには苦労した。まずどうしてもやりたかったのが、舞台と客席を自由に組むということ。ほとんどの小劇場が、舞台を雛壇の客席から一方向で観るという形しか取れない。それでは、舞台と客席の間に緊密な劇空間が生まれないのだ。
  舞台を大きな十字にし、客席は四エリアから観るという形に魅力を感じた。そして、全体を白基調のホワイトステージにしたいと思った。space EDGEという空間は劇場ではないし、照明等融通が利かない部分がたくさんあったが、 予算の規模からいってやむをえなかった。
  しかし、この作品は、別役慎司の理想に一番近い形をとることができた。これまで様々な理由で理想を現実化することが叶わなかったが、緊密で自由で、シンプルな創造空間の中、俳優のパッションが弾け飛び、また微細な人物の描写がある作品ができたことは嬉しく思う。
  もっと規模を大きく、たくさんの客の前で再演したい作品だ。
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