Theatre Review

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昨日は、シアターコクーンで「道元の冒険」を観て、戻ってきてすぐスクール生の審査を行い、夜は第9回公演顔合わせ会でした。顔合わせ会については、誰かが書いてくれるでしょう。

日本で芝居を観に行くのは珍しいけれど、第6回公演の「C・C」に出演した金子文が出てるので、晴れ舞台を観に行ってやろうということになりました。
冒頭に出てくるバスガイドの役のオーディションのために、一度演技を見たが、それは落ちてしまった。でも、なぜか御仏という役で登場。
この御仏が、ほとんどオールヌードなので、「すごい超越体験だな」と思いつつ、公演終了後に話を聞こうと思っていたら、千秋楽に呼ばれました。S席9500円は高いけど、お祝いみたいなもの。彼女も「体張って頑張るから、ごめんちゃい(笑)」というので。(笑うに笑えない)

大観衆の前で脱ぐのって、すごい体験だよねぇ。
逆に、なにもかもポジティブになりそう。
彼女も、すごい幸せだといってましたし、カーテンコールも幸せそうな笑顔でした。

作品の批評でいえば、二ツ星か、一ツ星半ってとこ。
俳優陣の演技はほとんど表面的でわざとらしい演技。まともなのは木場勝巳のみ。
ただ、台詞を喋らず、じっと禅を組んでいる阿部寛は、落ち着いた雰囲気がありました。台詞をしゃべるとケンシロウっぽく、道元とのギャップがある。
栗山千明の演技は、完全に素人で、ただ口を大きく開けて台詞を頑張って喋っているだけ。

小難しい宗教の話を、歌や踊りや笑いネタ満載で進行していくが、笑いネタに関してはほとんど無意味。奇をてらうものばかり。例えば、朝廷の人間の朗々たる喋り方が突然普通に戻ったり、老人が退場の際に背をピシッと伸ばしたり、六大学の歌を替え歌にしたり、スローモーションで卓球をしたり……。蜷川演出ってこんなの……?
おふざけで笑いをとる、日本人のよくない面です。
「この笑いの取り方はうまいなぁ」と思う点はありませんでした。

台本も良くない。描き方が中途半端。結局、3時間も使って道元自身が未消化です。
現代の結婚詐欺と婦女暴行で捕まっている男とのリンクも未消化で棚上げ。
最後、牢獄の檻と無数のテレビをバトンで下げた演出。現代人の多種雑多の思考や精神的病と繋げているのではないかと思うけれど、これによって散々繰り広げながら未消化の道元の冒険が更に霞んで終わります。蜷川演出上、ちょっとは大がかりな演出もやらないといけないのか? 

by 別役慎司