フリードリッヒ・フォン・シラー(1759年11月10日 - 1805年5月9日)はゲーテと並び称されるドイツの劇作家です。彼は、芸術論や哲学においても現代に通じる非凡な著述を残しており、生涯のテーマとなっていた「自由への希求」は、わたしたちに独自の自由な人生を切り拓くエネルギーを与えてくれるでしょう。
ベートーヴェンの交響曲第九の原詩はシラーです。この詩からも、いかに彼が、魂を揺さぶる霊性高い詩人であったかがわかることでしょう。
シラーの処女作「群盗」は、センセーションを巻き起こし、盗賊を真似る若者が続出したほどです。観客の心を揺さぶるパッションを保ちつつ、成熟した劇作家となり、「ワレンシュタイン」「メアリー・スチュアート」「ヴィルヘルム・テル」など歴史上の人物を描きました。ヴェルディのオペラでも名高いのが「ドン・カルロス」です。
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残念ながら「ドン・カルロス」の翻訳は非常に古いものしかありません。今回の公演のために、テンポの良い英語版から、現代劇として成立する文体で、約40作品のキャリアを持つ別役慎司が新たに台本を作成して上演します。原作の問題点である冗長さを、スピーディーな2時間舞台に変え、人物間の葛藤とパッション溢れる台本に。小劇場という空間だからこそ、濃密で強力なエネルギーを堪能していただけます。
わたしたちが伝統的に行っている「I Do & I Want」は、スタニスラフスキーが生涯をかけて演技探求した末のメソッドをベースにしています。この特殊なメソッドを使った稽古によって、SKY SOART ψ WINGSが理念とする自由でクリエイティブでアーティスティックな、その瞬間を生きた舞台を創り出せるのです。
期間……2012年5月10日(木)〜13日(日)
ステージ数……6回
劇場……日暮里d−倉庫
チケット……前売3000円 当日3200円
原作……フリードリッヒ・フォン・シラー
翻訳・脚本・演出……別役慎司
舞台監督・音響……林大介(零's Record)
照明……榊原大輔
舞台美術……Morri/戸井田雄
主催……SKY SOART ψ WINGS
後援……ドイツ連邦共和国大使館
劇団問い合わせ……office@stone-wings.com
*当日パンフレットへの折り込み希望団体は、メールにて申告願います。
折り込み日時=5/9(水)PM5:00~7:00 劇場ロビー
劇場:d−倉庫 地図 (日暮里駅南口より徒歩7分)
※駐車場はございません。
チケットのご購入は二種類の方法があります。
ドン・カルロス……この物語の主人公。元許嫁のエリザベートを密かに愛している。熱血漢だが頼りない? (出口博晶) |
フェリペ二世……大帝国の絶対君主。息子を煙たがっている。心から人を信頼できず孤独を感じている。 (別役慎司) |
エリザベート王妃……気品高い、誰しもが憧れる王妃。カルロスのことはまだ想っているのか? (横川愛) |
ポーサ侯爵……カルロスを助ける頼れる騎士。頭も切れるし、徳も高い。この物語のキーパーソン。 (梶健太) |
エボリ公女……ある意味現代的な女性。王妃に仕えているが、実は思いを寄せる人が……。 (水地優子) |
アルバ公爵……王の一番の信頼を得る、野獣のような血潮たぎる男。ちょっと頭は悪い……? (井上健一) |
レルマ伯爵……理知的な、メガネでもかけていそうな王の側近。 (井上卓也) |
ドミンゴ司祭……当時のスペインの宗教政策は残忍だったように、この男も曲者。 (中村利一) |
モンデカル侯爵夫人……王妃のお付き。心優しく王妃とも仲がよい。 (中島祥子) |
オリヴァーレス公爵夫人……王妃のお付きの女官長。お局的存在。 (えんどうまめこ) |
小姓(道化)……物語では重要な伝令役を担う。 (園田広美) |
このシラーの作品「ドン・カルロス」との出会いは1999年のイギリスでした。
当時初めて訪れたロイヤル・シェイクスピア・カンパニーの本拠地ストラットフォード・アポン・エイヴォンにおいて幾つかの作品を見た中の一つでした。
この作品はRSCの中でも最も小さな劇場「The Other Place」で行われました。
当時絶世を誇っていたスペインを描いた歴史大劇なのに、5m四方の舞台にほとんどなにも舞台装置はなく、客席も約140人程度しか収容できません。
劇場の小ぶりさとは対照的に、舞台はすさまじいものでした。
ほとんど英語が理解できないぼくが、3時間半イスに座り、最後まで見切ったとき、「スタンディング・オーベーションになる……!」と確信しました。
その通り、暗転から舞台が明るくなって役者が現れた瞬間に客席は総立ちでした。
鳥肌の立つ体験でした。世界一のレベルを誇るイギリスでもスタンディング・オーベーションになるのはほんのわずかです。しかも、大抵、ぱらぱらとだんだん人が立っていくのが普通ですが、終わった瞬間に総立ちになったのは今でもこの作品しかありません。
これこそ小劇場での舞台の理想型です。
舞台と客席の距離が近く、緊密な空間を創れるが故に、想像力の世界が広がり、圧倒的なエネルギーを持って観客の心を震わせます。
役者の実力があればあるほど、とんでもない衝撃的な舞台が生まれる。
これが小劇場での醍醐味です。
多くの著名な演出家や俳優が、小劇場での創造と何もない空間での創造を大切にしているように、中劇場・大劇場では味わえない体験が可能なのです。
「いつかこんな舞台をやりたい」という思いがありました。
そして12年。
遂に、「ドン・カルロス」を上演するために立ち上がりました。
自分の手で、衝撃的な舞台を創り上げるために。
奇しくもシラーの命日に、わたしたちは劇場入りします。
これはまったくの偶然でした。
シラーに導かれているのかもしれません。
シラーの書いた、とんでもなく面白い最高の作品「ドン・カルロス」を、
現代の日本人のお客様にも楽しんでもらいたいと思います。
そのためにぼくはシラーとタッグを組んで、新しい現代劇として甦らせます。
SKY SOART ψ WINGS 代表 演出
別役慎司
ご来場ありがとうございました
舞台写真はこちらで公開しております!
第12回公演「ドン・カルロス」DVD
定価:2500円
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